研究概要 |
平成18年度において,UWB MB-OFDMシステムにおける伝送路推定に関する研究を行った.このMB-OFDMシステムは,基盤技術として,OFDM(直交周波数分割多重)方式を用いている.このOFDM方式は複数の直交する異なる搬送波周波数で異なる情報を変調して,多重化して伝送する方式である.この時,伝送路での周波数シフトや,送受信機での発信器で搬送波周波オフセットが生じる場合,これらの影響により,搬送波周波数の直交性が崩れ,これによって搬送されている情報信号が相互に干渉し,OFDMシステムにとって致命的な損害が生じる.そこで,受信機でこの周波数オフセットを推定して補償する必要がある.また,OFDM方式では通常,同期検波を行うが,このためには受信器で伝送路の状態を推定する必要がある.従来,この伝送路推定と周波数オフセット推定は別々に行われていたが,本研究では,これら2つの推定を同時に行うためにEM(Expectation-Maximization)アルゴリズムを用いた新しい推定手法を提案し検討を行った.シミュレーション実験の結果,従来方式では搬送波間隔の半分以上の周波数オフセット推定は不可能であったが,提案手法では任意のオフセットが推定可能となり,同時に伝送路推定も行えることを示した.これらの成果をレフリー付学術論文,国際学会と,国内の研究会で発表を行った. また,UWBシステムは他の通信システムと周波数帯域を共用するため,相互の干渉が問題となっている.そのため,日本やヨーロッパでのUWBシステムではこの干渉対策(DAA : Detect And Avoid)技術が必須となっている.そのため,UWB通信の伝送路状態を細やかに監視する方式の検討を行った.その初期検討として,Kullback-Leibler情報量を用いた新しい干渉検出技術の提案を行い,国内学会にて発表を行った.
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