研究概要 |
平成19年度においては,UWB MB-OFDM方式における干渉検出技術に関する検討を行った.超広帯域での近距離無線システムであるUWBは他の通信システムと無線帯域を共用して運用することを前提としているため,UWBシステムの市場への恒久的な投入のためには,UWBシステム側で伝播状況を監視し,共存する無線通信システムが存在する場合には,UWBシステムの送信信号エネルギを十分に抑圧して送信する必要がある.平成18年度は,MB-OFDMシステムにおいて kullback-leibler情報量を用いて干渉信号の検出を行ったが,平成19年度はそれを拡張し,OFDMシステム全帯域で利用できるキャリヤを用いた場合の干渉検出について検討を行った.まず,複数のキャリヤに干渉が存在するか否かの組み合わせから複数の干渉モデルを規定し,観測信号を元に,それらの干渉モデルの中から,尤も良好なモデルを選択する.このとき,モデルを選択するために,モデルの確からしさを評価するための有用な規範である赤池情報量基準を導入した.更に,観測信号には情報信号成分と干渉成分,さらに雑音成分が含まれるため,これらを考慮して干渉成分の検出を行うためにEMアルゴリズムを導入した.現実的な無線環境では,その信号帯域が可変のものや,複数の異なる帯域に同時に干渉が生起する可能性が存在する.提案手法を用いて,これらの現実的な干渉信号の検出精度の評価を数値計算実験によって行った.この結果,それぞれの干渉パターンに対して適切な干渉モデルが選択されていることが確認された.これにより,干渉システムの占有している帯域までの細やかな情報を取得できるので,この情報に基づいて干渉回避技術を実装することにより,効果的な干渉回避が可能である.平成19年度は,これらの研究に関する成果を国際学会3件,国内学会に1件を行った.
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