近年、大規模な地震、土砂災害等が頻発しており、倒壊家屋や土砂、瓦礫等の下敷きとなった生存者の有無やその3次元的な位置を正確かっ迅速に把握することは人的被害を最小限にするために重要である。本年度は数100MHz帯での8×8チャンネルの送受信アレイ計測システムを開発し、埋没生存者の位置推定のための基礎実験を行った。 開発したシステムはRFスイッチにより送信アンテナを切り替え、受信側は8つの直交検波器を用い逐次的に8×8チャンネルのIQ信号のサンプリングを行う。全チャンネルの取得サンプリング周波数は約100Hzであり、人体の呼吸運動は0.3Hz程度であるため十分な速度を有している。また、送信パワーは18dBm、受信器の入力換算雑音レベルは1分間計測時で-130dBm程度である。ただし、4Hz以下では基準信号を発生するTCXOの位相雑音が支配的となり0.3Hz付近では-110dBm程度となる。 屋外において位置推定のための基礎実験を行った。使用周波数は256Hzであり、半波長ダイポールアンテナを用いた。波長1m程度に対し呼吸運動の胸の変位は数cmであるため得られるドップラ信号は非常に小さいことが予想される。実験は送受信アレイを7.6m離し、平行に対向させた配置とし、8素子アレイ開口幅4.06m、アンテナ高さを1.7mとし、地表面に人は仰向けに寝かせた状態で計測を行った結果、0.25Hz程度のドップラー信号がSNR10dB程度の信号強度で得られた。また、ビームフォーミング法を用いた位置推定を行い対象位置の推定が可能であることがわかった。またMUSIC法を位置推定に適用した結果、50cm程度の精度で高分解能に位置推定可能であることがわかった。
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