本研究年度においては、従来、透過像を画像生成過程としてモデルの有効性を確認してきた輝度勾配ベクトル場モデルが、反射型画像においてどのような性質を持つか検討し、透過型と同等の精度を得るために必要な画像処理について検討した。 透過型画像では対象となる3次元物体の厚みが濃度値として得られるため、輝度勾配ベクトル場は、線集中ベクトル場をはじめとする集中ベクトル場を形成することがわかっている。一方、反射型画像では前景は背景の影響を受けないため、人工的に生成した黒地に白線では、前景と背景の境界のみに輝度勾配ベクトルが生じるため、集中度が低くなる傾向にある。しかし、実画像に対する実験から、反射型の実画像では意外に良好に線が検出できることがわかった。これは、画像の生成過程において次の2つの現象が原因と思われる。 (1)撮像系に生じるボケによりエッジが鈍り、比較的広い勾配ベクトル場が生じた。 2)実画像における線は、影や物体の湾曲による反射光量の変化によって生じるため、そもそも理想的な線が形成されにくく、むしろ線集中ベクトル場が形成されるような線の発生が一般的である。 このため、透過型画像とほぼ同様の手法を利用できることがわかった。ただし、線の交差については、線の発生源となる物体が完全に隠蔽されることから、透過型画像ほどは良好に分離抽出できない。ただし、追跡などの処理におけるオブジェクト空間表現の有用性については、候補数の軽減など一定の効果が見られる。
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