1.計測システムの医用安全性のための装置改良にいて、以下の3点の改良・開発を行った。 (1)信頼性の高い測定感度と再現性を有する改良型マイクロタクタイルセンサ(MTS)の設計について検討し、生体に近いシリコーンゴム40%試料に対する測定精度±1.04%、測定経過時間60分の測定ドリフト±1.83%、20-26度の温度変化に対応して測定精度±2.00%以内に向上した。 (2)測定中の受精卵の発育環境を一定に保つ測定用チャンバーの開発(特許出願検討中につき詳細は省く)。 (3)位相シフト自動チューニングシステムのPLL素子、組込プログラムを改良してループ発振周波数0.1Hz、PLL位相計測分解能512step、サンプリング周波数毎秒1000回に向上した。 2.開発した卵子品質評価装置を用いて、マウス卵子透明帯の弾性率特性に関する以下の知見を得た。 (1)MII期からPN期にかけて体内受精卵の透明帯硬化が3.84倍(n=4)であったのに対し、SUZI法体外受精卵では3.60倍(n=4)とほぼ変わらない硬化を示し、両条件において透明帯硬化が一過性の現象であることが示唆された。 (2)MII期卵子をガラス化凍結融解すると1.39倍硬化し、表層顆粒の自然放出が示唆された。しかし、8%エタノールによる単為発生刺激による1.54倍の硬化は自然受精による3.19倍の硬化に比べて有意に低く、表層顆粒の放出のみが透明帯硬化の原因ではない可能性が示唆された。 3.共同研究機関・医療法人慈恵会乾マタニティクリニックにおいて、倫理委員会承認、日本産科婦人科学会の臨床試験承認を得た上で患者へのインフォームドコンセントと強い希望を得てSET(Single Embryo Transfer)を施行したところ、受精後5日目の胚盤法9つのうち有意に高い弾性率(19.9kPa)を示し、かつガードナー分類4AAを示した胚をSETしたところ、4900gの健児を出産し、本評価手法の有用性と安全性が示された。
|