通信ネットワークを介した制御系の構築やシステムバイオロジーなど制御工学の新しい可能性を切り拓く最新の課題において、情報伝達遅延はそれらの系の挙動に大きな影響を与える。一般に情報伝達遅延は制御性能を劣化させることがよく知られているが、その影響は一様ではなく、理論的に見ても完全に理解されているとは言えない。そこで本研究では、情報伝達遅延が制御性能に与える影響を理論的に明らかにした上で、従来の"遅延が存在しても機能する制御系"から"制御系設計において好ましい遅延の特徴づけ"さらには遅延が存在するからこそ機能する制御系"の解析・設計を目指している。 本年度は、情報伝達遅延が制御性能へ与える影響に関する、当初予定していたすべての理論結果を完成させた。この結果は、上で述べた本研究の目標を達成する上で重要である。 さらにこれら一連の基礎理論の研究と並行して、量子力学系の制御への応用に関する研究を進めている。既存の量子制御理論の実装の大きな障害となっている情報伝達遅延の影響に関する結果をいくつか導出した。量子制御系における遅延の影響の解析は世界的にも他に類を見ない。現在、量子力学系の専門家とともに共同で研究を進めている。
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