本研究の主目的は、半正定値計画(SDP)と双対理論に基づき、ロバスト制御系解析と設計のための新たなアプローチを構築することにある。本年度は、制御系解析・設計問題の多くがロバストSDPと呼ばれる数理計画問題として定式化されることに着目し、このロバストSDPの取り扱いに関する基礎的な研究を行った。ロバストSDPを厳密に解くことは一般に困難であるが、近年の研究によりロバストSDPに含まれる不確かなパラメータが単一の場合には、必要十分の形でこのロバストSDPを数値的求解が可能な(標準的な)SDPに帰着できることが明らかとされている。本年度はこの結果を単一の不確かなパラメータを有する線形時不変系のロバスト安定性解析問題に適用し、90年代初頭よりその成否が不明であったProf.Barmishの推論に対して初めて反例を示すことに成功した。さらに本成果を論文としてまとめ、発表した(裏面第11項第1番に記載)。 一方、ロバストSDPに含まれる不確かなパラメータが複数の場合には、必要十分の形でSDPを導くことは困難であり、通常十分条件の形でSDPを導くことがなされる。このSDPを解いて得られた解は一般に保守的なものとなるため、もとのロバストSDPに対する最適性を保証することができない。そこで本研究では、双対SDPに基づいて議論を進めることで、得られた解が厳密にもとのロバストSDPの最適解と一致するための判定可能な条件を導き、この結果を適用することで可制御な線形系の「可制御性の強さ」を厳密に計算可能であることを示した(裏面第11項第6番に記載)。 本成果を一般的な線形系のロバスト性能解析に拡張することは興味深く、次年度以降における研究を遂行する上での礎となる重要な結果が得られたものと考える。
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