本研究の主目的は、半正定値計画(SDP)と双対理論に基づき、ロバスト制御系の解析と設計のための新たなアプローチを構築することにある。本年度は、ロバストSDPと呼ばれる数理計画問題の厳密な取り扱いを目指して研究を遂行した。制御に関連する多くの問題がロバストSDPに帰着されることは広く認識されており、したがってロバストSDPの解法を研究することは意義深い。しかしながらこの問題の取り扱いは容易でなく、従来は十分条件的なアプローチ(例えば目的関数を最小化したい場合に、その上界値を最小化するようなアプローチ)がとられてきた。このような難しさを回避して、より厳密な取り扱いを可能とするために、本研究では双対SDPに基づくアプローチを提案し、とくに制御系のロバスト性能解析に関して得られた研究成果を国際会議において発表した(裏面学会発表第2項目)。このアプローチは、十分条件的なアプローチによって得られた解の厳密性を双対SDPに基づいて検証する方法を与えるものであり、近年の多項式計画における理論的成果のロバストSDPへの自然な拡張となっている。類似する研究成果は他の研究者によってもすでに報告されているが、提案する厳密性手法はいくつかの既存の厳密性検証手法を包含するより一般的なものとなっており、その意義は少なくない。この双対SDPに基づくアプローチは他の制御に関連する問題を扱う上でも極めて有効であり、得られた成果を論文ならびに国際会議において発表した(裏面雑誌論文第3項、裏面学会発表第1項)。総じて、制御系の(ロバスト性能)解析問題に対し、双対SDPに基づいた有効な解法を提案できたものと考える。これらの理論的成果を踏まえ、より取り扱いが難しいと考えられるロバスト制御系設計問題に対し新たなアプローチを構築することが次年度の課題である。
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