研究概要 |
近年のインターネット大容量配信技術などに代表されるように,通信事業の普及やインフラ設備等の充実・低コスト化などにより,ネットワーク技術を活用した制御系が構築されるようになった.その一つに,オペレータがいる親局から,遠隔地(子局)にある制御対象を操作する遠隔制御系が挙げられる.この遠隔制御系において問題となるのは,ネットワーク上をデータが流れる際に生じる伝送遅延と損失である.また,実際の制御系を考える場合には,拘束条件の存在を無視することはできない.そこで,本研究では,データの伝送遅延や損失が生じるネットワーク環境に於いて,拘束条件を破ることなく目標値への追従制御を実現する制御法の開発に取り組んでいる. 平成18年度の研究期間では,申請書の研究計画で示した項目の内,「拘束システムに対する遠隔制御法の確立」,「検証用遠隔制御系の構築」,そして,「遠隔制御法の検証実験」をおこなった.確立した遠隔制御法は,親局にリファレンスガバナと呼ばれる参照入力を整形する機構を設け,子局には,局所的に系を安定化するためのスイッチング制御法を設定する.新たに提案したインデックスフィードバックによってそれらが互いに連携できるようになり,任意の遅延や損失が生じるようなネットワーク環境でも遠隔制御系全体を安定化(拘束条件を遵守)させたうえで目標値への追従が実現できるようになった.また,作成した実験装置を用いて遠隔制御法の有効性の検証をおこなった結果,遠隔制御法の有効性が確認できた. 上述の遠隔制御法およびその実験結果に関しては,現在学術誌への論文を準備中である.また,この研究項目を遂行中に得られたスイッチング制御法と検証実験に関する成果が日本機械学会論文集C編に掲載された.また,遠隔制御法のアイデアを特許技術として申請中である.なお,この特許は,特許協力条約(PCT)に基づく国際出願を予定しており,独立行政法人科学技術振興機構から出願費用の支援認可を頂いている.
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