研究概要 |
本研究の目的は,フィードバックループをもっ系から得られたデータに対して適用可能な逐次部分空間同定アルゴリズムを開発し,その逐次部分空間同定アルゴリズムによって時々刻々更新される推定誤差を用いた閉ループ系のための変化検出法を開発することである. 平成18年度では,一括型閉ループ部分空間同定法の一っであるMOESP型閉ループ部分空間同定法の逐次アルゴリズムの導出を行った.MOESP型閉ループ部分空間同定法は数値計鋒において信頼性の高いQR分解に基づく方法である.逐次化において,新規データを取り込む際のHessenberg行列構造に着目したQR分解の逐次更新則を利用した点に特徴がある.導出されたアルゴリズムの特徴として,1)QR分解の逐次更新に基づき数値的な信頼性が高く,2)更新時間が10ミリ秒未満で非常に高速であることが挙げられる.さらに,提案アルゴリズムを指数忘却や移動窓などの忘却機構と組み合わせて,緩やかな時変系システムのようなパラメータ変化を伴うシステムの逐次同定を可能にした.特に,移動窓を使った忘却においては,Hessenberg QR分解を逆に解くアルゴリズムの導出を行った.結果の一部を第7回計測自動制御学会制御部門大会で口頭発表した。さらに,European Control Conference 2007に採択され,2007年7月に口頭発表する予定である.まとめた成果を計測自動制御学会論文集に投稿し同論文集の2007年5月号への掲載が決定している。
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