研究概要 |
コンクリートのクリープ特性は、温度応力などの初期応力の大きな影響因子であることは周知のとおりである。現在までに、クリープメカニズムについて種々の研究が進められているが、未だに確固たる理論が確立されているとは言い難い。また、予測モデルについても適当な汎用性と精度とを備えたモデルの提案にまで至っていないのが現状である。既往の研究において、クリープの発現性状に内部水分が関係しているとの報告がある。そこで、本研究ではコンクリートのクリープと水分移動との関係を明らかにする基礎的資料を得ることを目的として、一定の温度湿度環境下における圧縮クリープ試験を実施した。 +その結果、以下の知見が得られた。 1)本研究では,空気中の湿度を計測できるセラミックセンサを,打設時に直接コンクリート中に配置し,コンクリート中の相対湿度を計測した.その結果,雰囲気湿度の変化に伴うコンクリート内部の湿度変化を良好に捉えることが可能であることを示した. 2)セラミックセンサをコンクリート中に配置し,クリープ試験を実施した結果,封緘状態ではクリープは進行するが,内部の湿度変化はみられなかった.一方で,乾燥状態では,内部の湿度変化を捉えることができた.また,無載荷供試体と比較して載荷供試体の方が,湿度の低下量は大きく,乾燥クリープに内部の水分移動が関与することが確認された. 3)化学ポテンシャルの増加(湿度の低下)の伴い、単位クリープひずみも増加する傾向を示した。これより、クリープ発現と水分移動現象とは密接に関連していると考えられる。クリープと化学ポテンシャルの変化との関係より、コンクリート中の水の化学ポテンシャルをパラメータとしたクリープ予測式構築の可能性が示された。
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