研究概要 |
本年度は低温環境下で仮動的試験システムを構築するための準備段階として、米イリノイ大学で構築されたサブストラクチャ仮動的実験システムMini-MOSTを通常の実験室で構築し、動作確認を行った。 対象構造物としてH型鋼で構成された2径間1層の骨組み構造を用いた。この構造を2本の端部支柱(構造A,C)と、中間支柱と梁(構造B)の3要素に分割してモデルを構築した。構造A、構造Bは計算ノードとして構造解析プログラムFedeasLABによりモデル化し、数値演算用コンピュータにおけるシミュレーションの対象とした。構造Cは実験ノードとしてアルミ製梁供試体に置き換えた。アルミ製供試体は基部を固定し、先端は小型ロードセルを介してステッピングモータとLVDT変位計を接続し、モータとセンサ類はそれぞれモーションコントローラとA/D変換ボードを通して実験用コンピュータに接続させた。また、数値演算用コンピュータと実験用コンピュータ間のデータ交換を行い、実験全体を制御するためのpopサーバを構築するとともに、制御プログラムであるシミュレーションコーディネータを数値演算用コンピュータで同時に動作させた。上記の実験システムにより、サンプル地震波に対して数値シミュレーションと構造実験を同時に行う仮動的試験を実施した。数値解析においては数値積分法にα-Operator Splitting法を用いた。また、仮動的試験の結果の妥当性を評価するため汎用構造プログラムMIDAS/Civilでも時刻歴応答解析を行った。なお、仮動的試験装置の性能と妥当性を検証するための実験であることから、実験は線形領域で行っている。 上記の仮動的試験と汎用構造解析プログラムでそれぞれ得られた動的応答量の差異は実効値で7%程度であり、仮動的試験システムが適正に動作したと判断される。次年度は任意の解析モデルに対する実験を行うとともに、試験装置を低温室内に設置して試験を実施する。
|