繰返し載荷により鉄筋コンクリート部材のひび割れ幅や密実性に影響を与えることが報告されているものの、詳しいメカニズムは十分に把握されていない。また、引張を受ける異形鉄筋の周辺には内部ひび割れが発生することが確認されているが、耐久性への影響は明らかでない。本研究では、100万回までの両引き繰返し載荷を行った鉄筋コンクリート供試体に対してひび割れの測定および腐食促進を行い、各種ひび割れや損傷の存在が鉄筋腐食に与える影響について検討を行った。実験パラメーターは、水セメント比、鉄筋応力、繰返し数とし、それらが鉄筋腐食に与える影響を把握することを目的とした。 ひび割れの測定においては、繰返し載荷を与えた鉄筋コンクリート供試体に対してインク注入法を用い、コンクリート表面に達する主ひび割れ、内部ひび割れ、付着劣化区間を可視化させた。その結果、繰返し数の増加にしたがい、ひび割れ幅、付着劣化区間の長さが増大することを明らかとした。 鉄筋腐食促進については、繰返し載荷を与えた供試体を塩水乾湿繰返し環境下に置き、自然電位を測定することにより鉄筋の腐食の程度を間接的に測定した。その結果、繰返し鉄筋腐食に与える影響は、ひび割れの有無よりも、繰返し数の増加によるものが大きい結果を得た。また、繰返し数、鉄筋応力、水セメント比が大きくなると、鉄筋が腐食しやすい傾向にあること、腐食を開始した供試体は、ひび割れ付近から腐食が始まっていることを確認した。 以上より、異形鉄筋の繰返し載荷による影響が、鉄筋コンクリート部材の耐久性の評価において1つの指標となり得ることを確認した。
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