本研究では、中山間地域における簡易水道システムの統合化を背景に、分散型システムと統合型システムの冗長性、復旧機能性に関する評価手法を提案することを目的としている。本年度は、まず、中小都市や中山間地域との管路システムの特性と管路被害、復旧過程について調査を行い、施設条件の違いとそれによる被害・復旧における影響を分析した。幾つかの水道システムの資料収集から、中山間地域では給水人口が少ないため、管路口径も小さく、経年管路が多く埋設されていることが明らかになった。また、都市域と比べて耐震継手のある管路を採用している水道システムも少ないこともわかった。これらの水道ネットワークについてはGISのデータベース化を試みている。 さらに、中山間地の水道システムの特徴として、傾斜勾配の大きい道路上に管路が敷設されることが多い。本研究では、GISに道路ネットワークと標高データを組み込んで、管路が敷設されている道路周辺の傾斜角度を算出・図化した。現地調査から、本研究で用いた傾斜角度は妥当であることは確認している。さらに新潟県中越地震で被災した道路情報や地震動、地質と合わせることで中山間地域の道路閉塞率について定量分析を行い、地震時の道路閉塞率を推定する手法を提案した。新潟県中越地震の道路被害には斜面地域における路面の陥没、盛土の崩壊などが多く、地中管路にも影響を与える。斜面地域の地盤変位量についてさらに分析が進めば、中山間地域の地中管路脆弱性評価はさらに高精度なものとなると期待できる。
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