研究概要 |
全海岸域の80%を占めると言われている海岸崖の侵食及びそれに起因する被害が世界的にも数多く報告されている.今後,温暖化によって生じるとされる海面上昇や地下水位の上昇を考慮すれば,この問題は深刻化する可能性があり,早急に検討する必要がある.本研究では,1g場模型実験と実海岸崖の現地調査を行い,波の侵食に起因する海岸崖(Soft cliff)の崩壊機構と侵食現象の特徴を調べている. 上記の現象を把握するために,新たに試作したFlap式の造波水路が用いられている.まず,Chapmanら(2002)が報告している海岸崖の強度定数(Soft cliffの内部摩擦角φ'=29.3°〜31.2°,粘着力c'=2.4〜28.4kN/m^2)とほぼ同値になるように,斜面の一軸圧縮強さq_uを決定している.さらに,模型と実物のスケール比を1/30とするため,その強度q_uを1/30にした模型斜面(傾斜角60度)を作製している.模型斜面は,均一性を考慮し,早強ポルトランドセメントと豊浦砂の混合試料を用いている。また,斜面高の違いが結果に影響を及ぼさないように,限界高さが採用されている.波の作用による影響を定量的に評価するために,波浪周波数を0.1Hz(実換算),重複波条件下で,波高を3種類変化させた実験を実施している.併せて,北海道東部にある海岸崖の現地調査ならびに物理試験を実施し,実海岸斜面の示標特性を把握している. これまでに得た結論は次の通りである.(1)1g場模型試験においても斜面の力学的相似条件及び圧力レベル依存性を考慮すれば,波の侵食による斜面崩壊を評価可能である.(2)波の侵食による斜面崩壊はノッチの発達によって起こる可能性があり,またそのすべり形状は斜面強度に依存している.(3)波浪特性と斜面強度特性を考慮すれば斜面安定の指標を提案可能である.(4)北海道東部にある海岸線には,比較的軟弱な海岸崖が存在しおり,その斜面下層には比較的ゆるい土層が存在していた.
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