研究概要 |
本研究では,内部構造の影響を反映した岩盤の変形強度特性評価法を構築するために,内部で生じる亀裂発生・進展などの破壊現象に伴う強度発現のメカニズム解明を目的としている.平成19年度は,前年度の実験結果の検討に加えて,マルチスケール解析システムを構築した. まず,平成18年度の実験(単一き裂を含む供試体の圧縮試験)結果では,ウイングクラックと呼ばれる引張き裂の進展が観察される事がわかっている.それに対して,今年度は複数のき裂が分布した供試体では,供試体を斜めに横切るようにき裂が進展する.したがって,巨視的にはせん断破壊のような損傷を受けることがわかった.しかしながら,既存のき裂の一つ一つを局所的に見ると,やはりウイングクラックが生じていた.このことから,物体の損傷(強度特性)はき裂進展の局所的な現象と全体的な損傷とを分けて捉えることが重要であると考えられる. そこで,均質化理論に基づくマルチスケールモデリングの枠組みにき裂進展解析法を導入して,マルチスケール解析システムを構築した.このシステムによる数値シミュレーション結果では,実験結果とほぼ一致するような引張き裂の進展が得られた.また,供試体の巨視的な載荷曲線も実験結果と整合する結果を得ることができた.ただし,ピーク強度を得るまでの枠組みを有しておらず,それらの問題点の改良は将来の課題であろう. 以上の成果は,いくつかの論文にまとめ,公表している.今後は,数値シミュレーションと実験結果をより詳細に検討することで,本研究で目的としている強度発現メカニズムの解明を進めて行く予定である.
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