研究概要 |
本研究では, 内部構造の影響を反映した岩盤の変形強度特性評価法を構築するために, 内部で生じるき裂発生・進展などの破壊現象に伴う強度発現メカニズムの解明を目的としている. 最終年度である平成20年度は, より実用的な強度特性評価法を検討するとともに, 前年度に課題として明らかになったピーク強度発現直前の破壊メカニズムの解明を試みた. 前年度に開発したマルチスケール解析システムは, 巨視的な全体構造と微視的な材料内部構造の釣り合いを練成して解く手法であり, 計算コストの観点から言えば, あまり実用的な手法とはいえない. そこで, 材料内部構造の変化からあらかじめ, 巨視的な材料強度特性の評価を試みた. マクロ剛性の変化を巨視的な全体構造に対する不連続性岩盤材料の降伏と定義することで, マクロ応力空間上に不連続性岩盤材料の降伏曲面を算定した. その降伏基準を基に全体構造の極限荷重を算定した結果, 実験で得られた降伏荷重を推定できることを確かめた. しかし, この手法では見かけの降伏強さまでの挙動を精度よく評価できるが, ピーク強度を評価することができない. したがって, ピーク強度までを評価するためには, 力学モデルが足りないことが明らかとなった. そこで, ピーク強度を評価する上で, 必要となるメカニズムを追実験により検討した. その結果として, 不連続性岩盤の強度特性に大きく関わると思えるメカニズムを突き止めた. その実装は今後の課題である. 以上の成果について, いくつかの講演会に発表し, 論文にまとめている.
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