本研究の最終目的は任意の超音波領域の高出力振動を岩盤斜面および転石に直接入力し、岩盤斜面および転石の安定性を評価する計測手法を確立することである。そこで、本研究では大変位・高速応答で近年注目を集めている超磁歪体を起振子として採用した。本手法は任意の周波数成分を持つ衝撃弾性波を用いた岩盤、転石の周波数応答解析であり、岩盤の亀裂幅と周波数特性との関係を明らかにしようとしている。 平成18年度は、初年度であることから、超磁歪振動子の基礎特性の取得および受振器の選定を第一目標としてきた。結果、超磁歪振動子はモリテックス社製Ma25を採用することとし、受振器はTEAC製LF708を採用することとした。コンクリートブロックを用いた室内実験を重ね、900mmの底面反射を得る為には6kHz付近の超音波振動が有効であることを明らかにした。解析としては、チャープ波を入力とした場合の相互相関法、および単一周波数の連続波を入力とした場合のケプストラム解析を検証した。結果、底面までの距離が不明な場合にケプストラム解析が大変有効であるという結論を得た。室内実験においては、上記の他にクラックを有するコンクリートブロックを用いた実験も行っており、クラックおよび底面からの反射波を得ることに成功しており、推定寸法は現在のところ20%以内の誤差で計測することが可能となっている。これらの室内実験を実規模に拡張するために、秋田県大館市にある中野産業所有の採石場にて、同様の実験を行った。インナークラックが多数存在していたことによりこの実験は失敗に終わった。現在ケプストラム解析の精度を向上するべく、FFT・IFFT時の窓関数の選択をおこなっている。これにより更なる精度の向上が見込まれている。
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