本研究の最終目的は任意の超音波領域の高出力振動を岩盤斜面および転石に直接入力し、岩盤斜面および転石の安定性を評価する計測手法を確立することである。そこで、本研究では大変位・高速応答で近年注目を集めている超磁歪体を起振子として採用した。本手法は任意の周波数成分を持っ衝撃弾性波を用いた岩盤、転石の周波数応答解析であり、岩盤の亀裂幅と周波数特性との関係を明らかにしようとしている。 平成19年度ば、2年目である。平成18年度の下旬から行った、亀裂のインパルス応答解析・相関解析・ケプストラム解析を室内、実規模実験の計測波形に適用し、解析結果からの情報をもとに計測方法を必要に応じて順次変更した。なかでもケプストラム解析の精度向上に著しい成果が得られた。ケプストラム解析時のFFT・IFFTの窓関数によるノイズ除去性能の比較を行い、ハミング窓の有効性を検証した。また、直接波の影響を除去するため、ファンクションジェネレータからの入力波形を直接波と見立てた減算処理を導入することにより、反射波ピークをより強調することが可能となった。さらに、入力に複数の周波数を用い、それぞれの結果から共通するピーク、つまり反射波ピークを強調する手法である周波数重合法を開発した。上記の処理を複合的に導入することにより、再現性の高い反射波検出を可能とした。また、マイクロクラックでの弾性波透過・反射に関する、周波数のスレッシュホールドを計測し、85kHzを境にそれ以上の周波数はマイクロクラックで全反射することを確認した。それ以下の周波数においては、亀裂と反射面からの双方の反射を計測できることが明らかになった。この結果は亀裂の度合いを調査する際に役立つものである。
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