背面土がジオテキスタイルで補強された一対の補強土擁壁と、橋桁を一体化させたジオシンセティックス補強土一体橋梁(以下、GRS一体橋梁)の室内模型実験(室内載荷実験・振動台実験)を行った。本研究で得られた重要な知見を以下にまとめる: 1)GRS一体橋梁の安定性確保のためには、まずジオテキスタイルと壁面工との十分な定着強度を確保する必要がある。このため、まずジオテキスタイルを敷設しながら鉛直な盛土を構築し、その後場所打ちで壁面工とジオテキスタイルを一体化させる施工手順とする必要がある。 2)一体橋梁の構造的欠点である気温変動に伴う橋桁の熱伸縮による橋台背面盛土の残留沈下は、背面土をジオテキスタイルで補強し、盛土と壁面工と一体化させることにより大幅に抑制できる。さらに杭基礎を設置すると盛土の残留沈下を抑制でき、構造物の安定度は向上する。 3)背面土がジオテキスタイルで補強すると、交通載荷に伴う橋台裏の沈下も大幅に抑制できる。 4)上記2)に対して、杭基礎の有無はGRS一体橋梁の地震時安定性に大きな影響を与えない傾向にある。これは、杭を設置すると背面土の外側に破壊領域が推移するため(外的安定問題)である。すなわち、支持地盤が軟弱でない限り、杭基礎を有しなくてもGRS一体橋梁の耐震性能は十分に高いため、強固な杭基礎を設置してもその経済性に見合う大幅な耐震性能の向上は見込めない。したがって、GRS一体橋梁の十分な常時・地震時安定性と経済性を両立するためには、壁面工の鉛直支持杭としてではなく、橋桁の熱伸縮による壁面工下部の滑動を抑制できる程度の短杭を設置することが有効である。
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