研究概要 |
本研究は, 農業活動が盛んな流域(農業集水域)に注目して, 農業活動が盛んな流域の豊かな水環境の構築に関する学問的基礎の確立を目指した, 対象地は稲作とともに蜜柑, 柿, 桃などの果樹栽培が盛んな和歌山県北部の紀ノ川流域である. 瀬切れを起こさない流域一体となった水利用体制を確立するためには, 空間的かつ動的に変化する水文流出過程を理解することが重要である, そこで, 農業集水域に適した水流出解析モデルを構築して紀の川流域に適用し, 農業用水利用が灌漑期の水量に与える影響を評価した, その結果, 稲作および蜜柑, 柿, 桃などの果樹栽培の盛んな紀の川流域における, 6月から9月の灌漑期の流量変化の傾向もおおむね再現することができた, また, 紀の川の低水水量にはダムや頭首工の影響が強く表れていることが示唆された. 一方, 水質総量規制や水質汚濁などの質的課題に取り組むには, 流域からの汚濁排出量を算定し, 河川の水質に与える要因を特定することが重要である, そこで, 原単位法とマクロモデルを利用した汚濁負荷量解析モデルを構築して支川の貴志川流域に適用し, 窒素排出量を算定することで, 流域内の農業活動, 特に果樹園が河川水質に与えている影響を評価した, その結果, 貴志川流域では果樹園からの窒素排出量が最も多く, 約半分を占めていることがわかった, また月別負荷量からは, 施肥量と降水量がともに多い秋季に排出量が最も多くなることが示唆された.
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