研究概要 |
海流による沿岸域への水環境影響評価システムの構築について数値解析と海洋観測データの解析,ならびに模型実験を踏まえて総合的に検討した.本モデルの適用の対象としたのは我が国有数沿岸域である瀬戸内海の流れ場に及ぼす黒潮の影響評価である.まず,1982〜1999年を3期に分けて瀬戸内海の海洋観測結果を3期に分類するとともに,実測の密度分布および気圧配置の季節変動を考慮した平面二次元モデルによって瀬戸内海全域の流れ場を解析し,通過流量の強さと流向の変化は下層の低塩分水塊の滞留域の変化によく一致することを示した.次に,運動量保存則に基づいた考察から,黒潮流軸の位置とそれに沿った流速等の水理量を三角級数で近似する数値モデルを構築した.瀬戸内海の通過流量は1010m3/monthのオーダーで期毎に異なり,黒潮流路の蛇行・直進による影響は季節変動量の約3〜4割に相当することが推定された.海洋動態実験においても海流の接岸と開口部からの流入傾向は一致しており,海流の流路変化に伴う開口部境界域での流れ特性の違いを反映させることがモデルの高精度化につながることが示された.
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