研究概要 |
2006年5月29日〜31日に採取したボーリングコアから年代測定,粒度測定,花粉分析を行い,約40000年前から現在までの綾川中流域周辺の植生変化を推定し,以下の結果を得た. 現生(No.1)では,木本でスギ属やマツ属複維管束亜属が多くみられ,現在観測所周辺にはスギ属やアカマツが広く分布しており,実際の植生と花粉からわかる植生を比較して,非常によい整合性がみられた.3220±40yBP(No.2)では,木本のアカガシ亜属の割合が多いことから,比較的温暖な気候であったと考えられる.また,水辺を好む木本花粉がやや低率であったため,観測場所は河川からやや離れていたところに位置していた可能性がある.草本ではイネ科の割合が多いことから観測所周辺は湿地の環境であったと考えられる.9610±50yBP(No.5)では,川辺を好むヤナギ属やエノキ・ムクノキ属,クルミ属の割合が多い.ヤナギ属は虫媒花であるため,観測地点の近くに河川があったと推測される.草本では,湿地帯を好むカヤツリグサ科の割合が多いことから,No.2よりも後背湿地的な環境であったと考えられる.No.8でも,川辺を好むヤナギ属の割合が多いことから,No.5と同様に観測地点の近くに河川があったと推測される.草本ではヨモギ属の割合が多い.ヨモギ属は乾燥した場所や,保水性の悪い川辺を好むため,木本と草本の特徴から観測所周辺は保水性の悪い川辺であったと考えられる. 全体的な変化として,観測された期間において河道変動が起こっていたと考えられる.また,3220±40yBP〜現在にかけて現生植生のアカガシ亜属が減少して,二次林であるスギ属やマツ属が増加している.
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