研究概要 |
瀬戸内地方の最終氷期の試料を含んだ花粉分析は研究例が少なく, 香川県は引田町(坂東・古市, 1972)と高松・丸亀平野(古市, 1980)が報告される程度である. 2006年5月29〜31日に香川県綾川町で採取したボーリングコアを下位よりNo.9からNo.1の層準に分類して年代測定, 花粉分析を行った. 年代測定結果からNo.9からNo.6の層準は上部更新統の段丘堆積物, No.5層準より上部は完新統の堆積物と判明した. 花粉分析結果から, 最終氷期前期の亜間氷期は現在よりも冷涼かつ乾燥した環境, 後氷期初期は温暖でやや湿潤な環境, 後氷期後期は温暖で湿潤な環境であることが分かった. この結果は既存の瀬戸内海沿岸の最終氷期の花粉分析結果とよく一致した. しかし, 本研究では全体を通じてマツ科花粉が少なく, Castanopsisはみられなかった. これは瀬戸内海沿岸とは異なる綾川中流域における植生の特徴と考えられる. 上記研究内容を取りまとめて, 「香川県綾川町ボーリングコアの花粉分析による最終氷期以降の古植生」と題して, 第四紀研究に投稿準備中である.
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