消費ニーズの多様化や国際的な販売競争の激化に伴い、効率的なサプライチェーンネットワーク形成の重要性が増大してきており、サプライチェーン全体を俯瞰したうえで、貨物輸送や物流に関する意思決定がなされる場合が多くなってきている。本研究は、物流および貨物輸送がサプライチェーン上で行われる活動の一つであることに着目し、サプライチェーン特性を考慮した貨物輸送ネットワーク解析手法の開発を試みるものである。 本年度は、前年度までの研究成果である、現象記述型のサプライチェーンネットワークモデルを用いて、貨物輸送ネットワーク特性をより明示的に考慮できるよう、モデルを拡張した。具体的には、貨物輸送の担い手である物流事業者の行動を明示的に考慮し、それに所要時間変動などの輸送経路特性を反映させることにより、サプライチェーン上の流通経路のみならず、貨物輸送経路が分析できるように改良した。 さらに、上述の貨物輸送ネットワーク解析手法を用いて、効率的な貨物輸送ネットワークについて分析した。輸送ネットワークの拡充をはじめとした物流施策が、サプライチェーン上で活動する各主体にどのような便益をもたらすのか、および、サプライチェーン全体の効率性にどのような影響を及ぼすのかついて分析した。また、サプライチェーン上の貨物輸送基盤施設、あるいは、生産拠点や流通拠点の配置についても、物流施策の影響を加味しながら、分析を進めた。 これらの分析の結果、輸送ネットワークの拡充に伴う輸送の高速化および輸送時間の信頼性向上は、サプライチェーンネットワークの効率性増大や物流事業者の費用削減に貢献すること、および、商品取引量(輸送量)の空間分布を変化させる可能性があることを示した。
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