研究概要 |
禅宗寺院本山における景域形成の解析と評価 (1)寺院境内と周辺における敷地形成経緯の調査及び地理情報の収集 建仁寺,南禅寺,妙心寺,大徳寺,東福寺,天龍寺のそれぞれにおいて,大伽藍と塔頭が現在の構成に至る歴史的経緯を絵画史料・文書,及び歴史学分野の既往研究などを用いて整理した.次にGIS(地理情報システム)や地形データのCG(1/2500あるいは1/3000の地形図より入力し作成したもの)を用いて,現在および過去の地理情報を整理した.その際,実測と,絵画史料・文書などを用いて,各寺院境内の敷地データおよび経路データを作成した. 敷地形成経緯の調査の際,古地図,文書などの貴重史料を検索・調査し,閲覧・複写する作業や,必要な専門的知識の獲得は,分類の作業を正確に遂行する為に欠かせない手順であり,データは膨大なものになるものとなったため,歴史的情報をもとに,対象寺院周辺毎にデータベースを作成した.また,現在の景域の分析に必要な細かな構成を表現する必要のある要点においては,現地における測量およびデザインサーベイを行い,データを補完した. (2)空間のタイポロジーと景域構成の把握 歴史的経緯と設えられた意味的空間を,先に明らかにした地理情報と相関的に把握しながら,対応する空間的特徴毎にクラスターとしてまとめ(特に十境),総体としての景域の構成を整理した.6つの寺院において,この手順をくりかえし,それぞれの景域構成の独自性を明らかにした. (3)事例比較による景域形成原理の考察と整理 以上の分析によって明らかになるそれぞれの寺院周辺における景域構成を比較し,各固有性の要因になっている構成や,その背景を明らかにした.また,全ての事例を通して共通して見出せる構成上の秩序,十境による景域の形成原理,自然の導入法などを抽出し,整理した.
|