研究概要 |
インフラプロジェクトにおいて発生するリスクを「誰が」「どのように」負うかというリスク分担ルールは、プロジェクト全体の効率性に多大な影響を与える。リスクの発生可能性およびその損失の大きさが、事前の対応によって抑制することができる場合には、適切な対応を講じることで、費用効率性を実現することができる。インフラプロジェクトでは、複数の(実際には多数の)リスク要因が存在していることが通常である。しかし、複数リスク下における、プロジェクトリスクの最適なリスク分担構造について、未だ理論的な裏付けによって導かれたものは存在しない。伝統的な保険理論では被保険者の効用関数を所与として、単一のリスクのみを対象として、保険需要行動を分析する。しかし、企業のリスクファイナンス手法は極めて多岐にわたっており、保険以外のリスクファイナンス手法の利用可能性が保険需要行動にも影響を及ぼす。特に,民間企業や民間資金を活用した開発プロジェクトを実施する際には、保険はリスクファイナンス手法の一部として見なされており,プロジェクト全体のリスクは、融資者や株主を含めたステークホルダー間で分担されるのが一般的である6平成20年度では、プロジェクト主体の最適なリスクヘッジ戦略に関する理論的研究を実施し、プロジェクト主体が複数のリスクを保有することによるポートフォリオ効果の存在を指摘した。さらに、レイヤー型の保険戦略が企業の最適なリスクヘッジ戦略であることを示した。平成18年度からの3年間を通じて、本研究では、インフラプロジェクトにおける複数リスクのアンバンドリングを考慮した最適リスク分担構造を、合理的意思決定モデルあるいはゲーム理論を用いることによって、演繹的に導き出した点に新たな貢献がある。
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