研究概要 |
本年度は, はじめに非市場ネットワークに着目した災害復興プロセスと事前の防災計画に関する理論研究を積み重ねた. まずは, 発展途上国の災害復興の過程における国際NGOと現地NGOが連携しながら資本集約的援助と労働集約的援助を提供する問題を考えた. そこでは両NGO問に技術や嗜好の違いが存在し, かつ互いにそれらを把握していない問題について不完備ゲーム理論を用いて分析した(戸田他). また, 中国農村地域に着目し, 各コミュニティでの伝統的な地域文化や行事, 地域施設の維持等を目指した共同が, 被災後の地域住民間のインフォーマル金融の成立の基礎となっていることを示した. その共同がなければ, 高所得住民さえも都市に移住するインセンティブをもち, 地域社会が崩壊する可能性があることがわかった(Yu et al.).また日本の自主防災組織に着目して, 自主防災活動を通じて住民がリスクコミュニケーションを活発に行う可能性について分析した. そこではマニュアルを通じて活動レベルが与えられる場合よりも, 地域のリスク水準に応じて住民が自主的に活動水準を決定するときにコミュニケーションが盛んになることが示された(横松, 投稿中). 一方, 国際的市場ネットワークを利用したファイナンスの方法についても分析した. 政府が災害基金システムを設計し, 自国の保険システムに補助を与えつつ, 一国際金融市場での貸借を行い, 結果的に世代間でリスクを配分するフレームワークについて定式化した(Ye et al.)また20年度に横松はアメリカ・ミネソタ大学応用経済学部に長期滞在し, 当学部Terry Roe教授とRodney Smith教授と, 世界的なエネルギーリスクの下でのマクロ経済の動学的挙動に関する研究を行った. そこでは世界の貿易データを用いて定量的結果を得る応用一般均衡分析モデルを作成した(本年度中に投稿予定).
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