研究概要 |
1.昨年度に引き続き,活動ニーズが活動の機会に影響を受けていることの実証を行った.具体的には,大学生を対象としたアンケート調査を実施し,出身地における公共交通サービス水準の差が現在において形成されている活動ニーズに影響を受けているのかを検証した.その結果,出身地におけるサービス水準が低いと謙虚なニーズが形成されていることが統計的に明らかになった.これより,活動ニーズのみに着目して公共交通計画を策定することの不適切さを裏付ける結果が得られた. 2.公共交通サービスが利用者に課す時空間的な制約を明示したアクセシビリティ指標を開発した.具体的には,人々が一日に利用可能な時間を所与とした上で,その時間内に実行可能な活動パスがどれだけ多様かを数え上げるアプローチをとった.また,その指標の近似指標を提案し,どのような条件のもとでそれらが乖離するのかを明らかにした.また,その指標と従来の簡便な指標との間の相関性について分析を行った. 3.活動の機会を保障することに着目した各地区へのサービス水準の設定方法に関する試論を検討した.このもとでは,昨年度に検討した結果,すなわち,潜在的な利用者の活動ニーズをそのままサービス水準の設定に用いることは不適切であることを踏まえ,現在公共交通を利用せず,その時空間的な制約が課されていない人々の交通行動に着目するとともに,代替手段との乗り合い効率に着目し,最も効率的な手段を用いることでサービス水準を導出しうるとの論を展開した.
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