研究概要 |
衛星リモートセンシングにより沿岸海域の汚濁物質の解析を行うためには,対象とする海域の光学モデルを構築する必要がある.本研究では,近赤外域の波長を利用したアルゴリズム開発を目的としており,可視域から近赤外域にわたる波長域での海面反射率を再現しうる光学モデルが必要となる.この光学モデルは,放射伝達理論を基にしており,海中に存在する様々な溶存物質および懸濁物質の光学特性が必要となる.また,構築した光学モデルの評価には,実際に現場での観測が必要となる.今年度は,下記の2項目に関して研究を実施した. 1.無機性懸濁物質の光学特性のモデル化 光学モデルと必要となる光学特性は,吸収係数と後方散乱係数である.これらを無機性懸濁物質濃度の関数としてモデル化する必要がある.無機性懸濁物質の粒径分布,および吸収係数の測定結果から,Mieの散乱理論により無機性懸濁物質の複素屈折率を推定した.無機性懸濁物質が非球形であることを考慮し,推定した複素屈折率を用いてT-matrix法およびRay-Tracing法により粒子の各効率因子を粒径ごとに算出した.そして無機性懸濁物質濃度の関数として表した粒径分布で各効率因子を積分することによりモデルを構築した. 2.可視-近赤外域にわたる海面反射率測定法の検討 海面反射率の測定のため海面上で放射観測を実施する際.海面における天空光の鏡面反射の影響を受けてしまう.その影響をさけるため水中分光放射計を利用するが,近赤外域では水分子の吸収が大きいため,水中での近赤外光の測定は困難である.そこで可視域の水中分光放射計による水中での観測と可視-近赤外域の分光放射計による天空光と海面反射光の観測とを組み合わせることで,海面での鏡面反射を除去する方法を検討した.波の影響を無視しうる静穏な試験水面での測定を実施し,この方法の妥当性を確認した.
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