研究概要 |
我が国の水道水におけるヨウ素系消毒副生成物の重要性を評価するための実験的検討を進めた。まず,本年度は前駆体である水道原水中のヨウ化物イオンの分析方法について複数の方法を検討した。その結果,イオンクロマトグラフと吸光度検出器の組み合わせにより数ppbのオーダーの検出感度を実現することができた。この分析方法は,環境中のヨウ化物イオン分析および全有機ヨウ素分析に応用が期待される。また,この方法により,環境水中(主として琵琶湖淀川水系)のヨウ化物イオン濃度の把握を試みた。その結果,臭化物イオン濃度より1オーダー程度低く,数-数10ppbの範囲であることがわかった。また,臭化物イオン濃度の場合は,下水処理水中の濃度が圧倒的に高かったが,ヨウ化物イオンに関してはそのような傾向は明確には認められなかった。例えば,琵琶湖北湖では,6.8ppbであったが,下流の下水処理場放流水では最大10ppb程度であった。したがって,臭化物イオンの場合にとは異なり,流域内の人間活動が直接的に水道原水中のヨウ化物イオンの増大に寄与しないこと示唆された。ただし,ヨウ化物イオンはヨウ素酸イオンなど水中で様々な化学種に変換されやすい。このため,今後の調査ではヨウ化物イオンに加えて,ヨウ素酸イオンや全有機ヨウ素についても流域内のマップを作成することとした。さらに,有機ヨウ素系消毒副生成物のもう一方の前駆体である溶存有機物の分画についても準備を進めた。固相抽出と大容量エバポーレーターを組み合わせたシステムを構築し,有機ヨウ素系消毒副生成物の生成に関わる溶存有機物のキャラクタリゼーションの手法を確立することができた。
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