嗅覚測定法の信頼性確保のために重要であると考えられる不確かさの評価方法を確立するために、不確かさの要因を系統的に整理し、不確かさの見積もりを試みるとともに、実際の測定における不確かさ評価の適用範囲について例示した。不確かさ成分は大きく標準臭気、試料採取、パネル、判定試験に分類することができるが、昨年度の研究から年齢、性別、パネル・オペレーターの経験年数、当初希釈倍数、測定所要時間が影響している可能性が高いことが明らかになったことを踏まえて、不確かさの見積もりを行った。昨年度のデータ解析で対象外であった測定器具に起因するものと判定試験の繰り返しに起因するものについて概算したところ、判定試験方法自体に起因する不確かさの要因が大きく影響している可能性が考えられた。不確かさ評価の適用可能性については、まず精度管理の一手法として用いる方法が挙げられた。すなわち、各測定機関で精度管理のための標準臭気に対する嗅覚測定法の不確かさ評価を行っていれば、標準臭気を用いた定期的なチェックの際に判定基準に適合しているかどうかを知ることができると考えられた。次に、規制基準遵守状況のチェックとして用いる方法が挙げられた。すなわち、ある工場排ガスに対して嗅覚測定データを蓄積している場合、その臭気に対する不確かさを評価することによって、規制基準近辺などの判定が微妙な領域の測定結果に対して有用な情報を与えることができると考えられた。
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