研究概要 |
本研究では,都市内に存在する木質資源ストックの有効利用に向けて,木質資源の循環技術を包括的に体系付けて調査するとともに,地域特性に応じた循環技術の複合的な選択肢を最適化するモデルを構築することを目的としている. 本年度の研究実績は以下の通りである. 1.前年度に構築した木質資源に関するデータベースを用いて,解体廃木材および間伐材の発生量を推計した. 2.前年度に技術インベントリを調査した木質資源の循環利用技術を導入する対象を定めた導入シナリオを構築した. 3.技術導入シナリオを評価するフレームを構築し,各シナリオを評価した.評価対象期間は,廃木材を建材として長期間利用することの効果を評価するために,50年間とした.評価指標は,LCCO2だけでなく,a)エネルギー利用によるCO2の排出量,b)木材焼却による炭素放出量,c)植林による炭素吸収量,d)建材利用による炭素固定量,e)新規資材の使用量削減による代替効果の各項目を採用した. 4.埼玉県を対象として,設計した循環技術導入シナリオの環境負荷削減効果を評価し,木材循環を志向した木質住宅システムを提案した. 以上の成果については,その一部を平成19年度中に4件の雑誌論文,3件の学会発表として公表した.平成20年度の前半に,さらに複数の論文を作成する予定である. 今後の研究展開として,木質資源の再資源化によって生み出される環境価値を,林業従事者.製材メーカー・住宅メーカー・再生建材メーカーなど,木質資源のライフサイクルに関与する各ステークホルダーごとに定量化する.その結果に基づいて,環境価値の受益者が合理的に費用を分担する仕組みを設計することが挙げられる.
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