浄水処理による医薬品類の除去性に関しては、オゾン処理や膜分離、紫外線処理等の高度浄水処理技術に関する知見は多く見受けられるものの、特に基本的な浄水処理である塩素処理や凝集沈殿処理などの情報は限られている状況にある。そこで本研究では、塩素処理による医薬品の分解速度や分解特性を明らかにすることを目的とした室内実験を実施した。 対象とした医薬品は、解熱鎮痛剤のイブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、フェノプロフェン、プロピフェナゾン、高脂血症治療剤のゲンフィブロジル、高脂血症治療剤の代謝物であるクロフィブリック酸の9物質とした。各医薬品濃度が各100μg/Lとなるよう精製水に添加し、リン酸緩衝液を用いてpH7.2に調整した。初期有効塩素濃度が1mg/Lとなるよう次亜塩素酸ナトリウムを添加した後、直ちに密封、遮光して撹拌し、最大24時間接触させた。所定時間ごとに、DPD法による残留塩素濃度の測定および固相抽出誘導体化GC-MS法による医薬品濃度の分析を行い、各医薬品濃度の時間変化を把握した。 実験対象とした9物質のうち、インドメタシンおよびプロピフェナゾンは1時間後に不検出となったが、ナプロキセンおよびジクロフェナクは24時間後の残存率が30%程度、他の5成分は24時間後も80%以上残存した。速やかに塩素と反応した2物質は、いずれも窒素を含む環を有する点で化学構造が共通しており、この部位が優先的に塩素と反応する可能性が想定される。
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