研究課題
ここでは、コンクリート構造物の長寿命化を目的として、自己修復コンクリートの開発に関する検討を行った。具体的には、適切な補修剤を内包した脆性パイプを、コンクリート中に埋設することにより、自己修復機能を発現させるものである。本年度は、この機能の重要な要素である、補修剤を保護するためのパイプについて重点的に検討を行った。このパイプには、施工時にはハンドリングが容易であることが求められるため、靭性的に振舞う必要があり、コンクリートの硬化後にはひび割れに敏感に反応できるように、脆性的な挙動が求められる。このように相反する要求性能を満たすため、ここでは低融点の有機フィルムと、金属製のばねを用いてパイプとすることを提案し、基礎的な実験によってその有効性を確認した。これは、パイプをコンクリート内部に恒久的に設置するものではないが、ここで提案する自己修復コンクリートに適用可能であると考えられる。また、より基礎的な段階として、コンクリートが本来的に有する自己修復機能についても検討を行った。適切な繊維を組み合わせによって補強されたセメント系複合材料(HFRCC)は、非常に優れた力学性能を持ち、特にひび割れ幅の進展を抑制する特徴を有する。ひび割れを生じさせた供試体を用いて、アクリル板等により自作した透水試験装置を用いて透水試験を行ったところ、ひび割れ幅の小さい場合に、遮水性能に関して高い自己修復効果を得られることが確認された。また、併せて力学性能についても検討を行ったところ、引張強度や延性能などの回復は必ずしも確認されなかった。ここで得られた知見を下敷きとして、平成19年度も引き続き自己修復コンクリートの開発に関する研究を行う。
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