研究概要 |
建物の地震防災を行う上で,表層地盤のS波速度構造と減衰定数を簡便に評価する手法を確立することが必須である.そこで本研究では,無線2点3成分計測システムを開発し,交通振動計測に基づいてレイリー波およびラブ波の複数点間位相差と距離減衰特性を抽出し,弾性波動論に基づく逆解析から表層地盤のS波速度構造と減衰定数を同時に同定する手法を提案し,その有効性と適用限界を現場実験から検証し,さらに表層地盤の地震時挙動評価への応用の可能性を検討することを目的とする.平成18年度は,以下の内容を実施した. (1)交通振動に含まれるレイリー波およびラブ波の複数点間位相差と距離減衰特性を現場で確認可能な無線2点3成分計測解析システムの開発. ・無線LAN機能付きA/D変換器内蔵型短周期振動計を用いて,交通振動の無線2点3成分計測装置(ハードウェア)を構築した.この際,機能を特化させることで,従来の計測装置よりも格段に小型化・軽量化を図った. ・交通振動の2点3成分計測データから,レイリー波およびラブ波の複数点間位相差および距離減衰特性を求める解析ソフトウェアの開発に着手した. ・これらのハードウェアおよびソラトウェアに基づいて,交通振動に含まれるレイリー波およびラブ波の複数点問位相差および距離減衰特性を現場でリアルタイムに確認し,最適なセンサ配置を現場で選択可能な無線2点3成分計測解析システムを試作した. 次年度以降,(2)計測データから表層地盤のS波速度構造と減衰定数を同定する逆解析法の開発,(3)(1)のシステムを用いた,種々の交通条件下における交通振動の現場計測,(4)(2)の逆解析法と(3)の計測データに基づく表層地盤のS波速度構造と減衰定数の同定と,提案手法の有効性の検討,(5)同定された地盤構造に対する地震応答解析と解析結果の妥当性の検証を実施する予定である.
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