研究概要 |
高層住宅のベランダやバルコニーなどの開口部に生じる最大瞬間風速を予測するためには,時々刻々変化する高層建物まわりの複雑乱流変動を予測できるラージエディシミュレーション(LES)を実施する必要がある。高層建物開口部内は,建物スケールで生じる剥離流の影響と開口部内の部材が風に与える影響を同時に考慮する必要があることから,局所的に格子解像度をあげることができる複合格子法の導入が求められる。本研究では,計算格子の接合部分で格子点を一致させる必要がない点で利便性の良い重合格子法を用いるが,LESにより得られる乱流変動を格子接続部分で適切に伝達させることが重要であることから,格子接続部での保存性を改善するための重合格子アルゴリズムを提案した。この手法をレイノルズ数10000の円柱まわりの複雑乱流場に適用した結果,後流の乱流変動が計算格子接続部分を介して円柱表面により適切に伝達されることにより,円柱まわりの変動風圧が改善される結果を得て,アルゴリズムの効果を確認した。 一方,高層建物開口部内の最大瞬間風速は,建物スケールに比べて比較的小さな渦構造の影響を受けることが予想されるものの,建物などのブラフボディまわりのLESにおいては数値安定性確保の面から高次精度風上差分法を利用することが多い。そこで本研究ではレイノルズ数10000の円柱まわりの複雑乱流を対象としたLESにおける数値粘性の有無の影響を調査した。数値粘性の導入により渦構造が相対的に大きくなること,後流中に間欠的に現れる縦渦構造によりパルス状の流速変動を生じることが明らかになった。
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