今年度は、環境調整行動をモニタリングする手法の開発を手がけ、住環境教育プログラムを実施することによる環境調整行動の変化を客観的にとらえられるようにした。得られた成果は次の通りである。 1. 室内外に設置されたCO_2濃度計、温湿度計、および室内の人感センサによる計測値、屋外風速の気象庁データといった、基本的な環境計測データから、住宅における室内の滞在人数を推定する方法を確立した。計測データの事前処理、換気量の推定、室内の総代謝量および放湿量の特定を経て、滞在人数の推定に至る手順となっている。 2. 滞在人数1〜3人、活動強度1.5〜4.0metの設定条件について2008年12月〜2009年1月に被験者実験を行い、この方法による推定精度を検討した。その結果、在室1人の場合の正答数は10回中7〜9と全体的に多かったのに対し、在室2人では2〜5、在室3人では3〜4に留まった。活動強度による正答数の差は表れなかった。 3. 夫婦と子(大学生)一人が居住する戸建て住宅において、既に2003年10月〜2004年3月に計測済みのデータから滞在人数推定を行ったところ、居間では食事時(8:00、12:00、19:00〜22:00)に家族がそろう傾向が見られ、また寝室では夜間の就寝や午睡に使用される様子、子ども室は頻繁には使用されていない様子が見られ、各室における滞在行為の特徴が分かった。 住環境教育プログラムの中で建物模型として用いられる紙箱については、矩形開口部の位置や分割数と底面中央における昼光率の関係を実験と計算により明らかにした。また、紙箱の素材の力学的物性値を求めて数値シミュレーションにより応力解析を行い、教育プログラムで利用できる基礎資料を得た。
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