本年度は、以下の5つの研究課題について検討した。 1.気象庁1分間気象観測値データベースの構築 1996〜2005年における約50の気象官署の1分間気象観測データを入手し、標準年気象データのデータソースとしてデータベース化した。また、データベースに含まれる欠測状況を確認し、欠測補充処理に着手した。本データベースに基づき、気温・湿度・降水量の1分値の補充法を検討した。 2.気温・湿度の1分値補充法の検討 1時間間隔の気温、湿度を直線補間、スプライン補間、Lagrange補間して1分値を造成した場合の信頼性を比較した。その結果、3つの補間法の差はわずかで、簡易な直線補間法により1分値を造成することが可能であることが分かった。ただし、急激な天候変化に伴い気温変化が生じた場合は、何れの補間法もやや誤差が大きくなるが、アメダスの気温10分値に基づいて補間すれば、その誤差は改善できる。 3.1分間降水量の補充法の検討 1時間降水量と10分間降水量に基づいて、1分間降水量を補間する確率的な手法を開発した。この手法では、まず当該1時間あるいは10分間の降雨回数を、前後の降雨継続時間や降雨強度から推定する。さらに当該時刻の積算降水量を降雨回数で除して1分間降水量を算定する。これにより平均的な1分間降水量を算定することが可能となったが、今後は降水量のランダム性を考慮する余地がある。 4.1分間波長別日射量の推定法の検討 水平面全天日射量の1分値から波長別の全天日射量、天空日射量、直達日射量の1分値を推定する数理モデルを開発した。今後は、モデルの汎用性を高め、波長別日射量を1分間標準年気象データに収録する。 5.標準年気象データの経年変化の検討 データソースの年代が異なる3種類の標準年気象データに基づくオフィスビルの空調熱負荷を比較した。その結果、年代が新しいほど温暖化の影響で暖房負荷が減少、冷房負荷が増加する傾向が確認された。
|