研究概要 |
本研究は2年間に渡る実施計画となっており,本年度は試行段階の位置づけでガラスの汚染による熱・光性能への影響についての実験を行った.具体的な研究実施内容としては,使用するガラスサンプルの収集を行って新品の状況で分光透過率を測定しておき,ガラス片を屋外に一定期間暴露した後,同様に分光透過率を測定した. その結果,最も一般的な透明ガラスにおいては,汚れによる影響は特定の波長帯に偏ることなく短波長域の全般的に透過率が低下する傾向が見られた.一方で反射率については殆ど変化が無かったことから,透過率の低下は全て吸収率の上昇に寄与していると考えられる.従って,日射熱性能としては,より日射熱が室内に流入する方向に劣化が作用する結果となった.さらに,複層ガラスにおいては空気層の気密性低下に伴う断熱性能への影響が懸念される.また,低放射ガラスでは金属蒸着面の劣化について検討が必要である.ガラスの汚染・劣化に伴う光性能への影響としては,可視光透過率の影響だけでなく,可視光波長域における全般的な透過率低下が起因して,屋外から本来照射される日射のスペクトルが平坦化されることが懸念される.すなわち,日中の青い天空光から日没の赤い光への変化という,昼光が本来有する演色性打ち消される方向に作用することが考えられる. 以上記したように,今年度の試行によって得られた知見と課題に基づいて,本研究課題の実施を引き続き遂行する.
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