昨年度の試計測に引き続き、実使用状況下での窓の熱・光性能を評価するため、研究代表者らが開発した窓面熱性能計測装置の改良と、ブラインド併用窓における日射透過特性を計測可能な積分球を応用した計測装置の開発を行った。熱性能値の計測装置については、執務室等での使用状況での測定を可能とするため小型化を図り、従来の装置と同等の精度で計測できることを確認した。また、日射透過測定装置については、ブラインド併用時において生じる窓面透過日射量の分布の影響を平均的に捉えるため、積分球を応用して開口部を拡大したものを新たに作成した。装置のセンサには感度が高い照度センサを用い、通常の照度計を上下に移動させて計測した平均透過照度との比較を行った結果、日射・スラット角の条件に関わらず一定の比例関係を得た。 これらの装置を用いて実使用状況下の窓面での実測を行った結果、主に空中浮遊物等の汚染による性能低下傾向が見られた。熱性能の低下は光性能と比較して少なく、光性能における可視光透過率の低下および分光透過率の変化に伴う演色性への悪影響が見られた。複層ガラスの空気層の気密性低下や低放射ガラスの金属蒸着面の劣化については有意な結果は得られず、より長期の実験が必要である。 以上の実測結果に基づいて、熱負荷・昼光計算を連成したシミュレーションモデルに窓面の劣化を組み込んだ。この計算プログラムを用いて昼光利用を前提としたオフィスにおけるエネルギー消費量の年間計算を行った結果、昼光利用効果の低下に伴う若干の照明電力増加と冷房熱負荷増加が見られた。
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