平成19年度は、前年度に実施した岐阜県白川村の平瀬地区における照明実験の結果を分析すると共に、平瀬地区における屋外照明の実施計画をまとめた。すなわち、既存のポール灯による街路照明ではなく、街路に隣接する空地や建物壁面などの照明を配置した低輝度分散型の照明計画である。防犯性と周辺への見通しを高めると共に、消費エネルギー量を現状よりも小さくするという提案であり、研究成果を基にした光環境整備まで結び付けることができた。 さらに横浜市中区の山手西洋館において、場所の認知を促すと共に、歩行者の安心感を高め、消費エネルギーが高くならないようなライトアップの手法を検討し、2007年12月に実施した。照明方法としては、地域の象徴となる建物ファサードの中で、場所の認知につながる部位を抽出し、そこに光を集中させることと、人の気配を醸し出すような光をファサードにつくるということである。一部の街路灯を消灯し、筆者らが提案する低輝度分散型の街路照明も実験的に提示した。地域住民へのアンケート調査を基に照明を計画し、実施後にそれらの効果を検証した。 以上の様に本研究では、異なる二つの地域を対象とし、各々の街の特性に合せた照明計画を実験的に提示し、その防犯効果、歩行者への安心感に与える効果、見通し、場所の認知への貢献度、などを検証した。そして何れの提案に対しても、現状の街路照明よりも、光束量が約1/4となり、消費エネルギーを削減できることを示した。
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