本研究は幼稚園の幼児を対象に子どもの基礎運動能力と室内空気質および温湿度を中心とした居住環境に関する調査を行い、居住環境ストレスが子どもの基礎運動能力に与える影響について明らかとすることを目的とする。研究は研究助成期間以降に継続的に実施し、子どもが成人になるまでの約15年間の追跡調査を行う予定である。室内環境が子どもの成長や発育にどのような影響を与えるか調べるためには、長期追跡調査を行う予定である。平成20年度では、実測調査とともに、唾液センサーやフリッカー試験装置、リアクションBGと呼ばれる反応時間を測定する装置を対象に、主に高齢者や成人を中心に行われている「疲労」を測定する機器を用いて体力とともに「疲労」の申告と比較し、疲労度を測定する手法について明らかとした。比較調査の結果、唾液センサーは、測定時間の状況により、唾液アミラーゼの量のばらつきが大きく、1日の疲労度を測定には困難であるが、フリッカー値やリアクションBGは概ね自己申告による疲労度との対応がとれており、日記形式で毎日の疲労度と室内環境の関係を明らかする調査を行うためには適していると考えられる。一方、室内調査研究では、ホルムアルデヒド濃度、床のダニアレルゲン量の測定等を行い、さらに、保護者と子どもの健康状態と嗜好を明らかとするため、米国Ashford、Millerが作成した環境因子から生じる健康障害の質問票QEESIを参考とした質問票を用いて調査を行ったが、明確な体力と住環境の相関は得られず、今後は母集団を1000件以上確保した調査を行う必要があると考えられる。
|