本年度においては継続して調査を展開している仙台市における過去15年あまりの創造活動の状況をアンケート調査及びヒアリング調査などから詳細に整理・考察を行った。特に演劇の創造活動支援施設であるせんだい演劇工房10-BOX(2002年)の開設前後により、仙台市内の演劇の創造活動のプロセス、活動揚所に大きな変化があることを把握した。同時に公的な文化事業の企画立案及び各種助成を行う市民文化事業団の事業展開との関係を捉え、事業イベントの企画システムが人材育成及び活動の規模へ波及する事を碓認した。 次に1961年に群馬県高崎市に開館した群馬音楽センターを題材として、舞台芸術施設の開館前後における地域の舞台芸術活動の変化及び、長期的な活動状況の推移を捉えた。調査の結果施設の実現により様々な活動団体の発生を碓認する一方、専用的な施設運営が継続されないために地域全体の活動のポテンシャルを開館後も形成することが困難であったことを捉えた。 更に、都市的な状況と劇場整備の観点では、東京都世田谷区の下北沢に着目し、過去20年あまりの小劇揚の劇場整備とそこでの劇団の活動状況、劇団の劇場選択意図を整理し、各劇団の類型化を行った。そしてその類型化ごとに下北沢での公演が活動自体の拠点を下北沢に移動させたり、知名度等の価値を施設選択条件として重視するなどの活動が集積する要因として明らかとなった。同時にこれらの集積がメディアにおける都市の価値を高め、新たな集積を呼び込む循環構造となっていることが明らかとなった。 また、2006年10月には、日本型の舞台芸術環境の都市部の集積効果の新しい展開を捉えるために、アジアで最も小劇場の集積状況が高いソウルの大学路を対象にフィールドワークを行った。
|