本研究の目的に適合する高架構造物の撤去・再利用を通じた都市空間再生の事例のうち、米国ワシントン州シアトル市及びペンシルベニア州フィラデルフィア市の事例について、現地調査を実施した。平成19年4〜7月の期間に、現地調査に向けた情報再整理、インタビュー依頼及びインタビュー内容の検討、現地踏査の計画を行い、8月に情報収集、インタビュー、現地踏査で構成される現地調査を実施した。 その後、ポートランド、ボストン、サンフランシスコ、シアトル、ソウル、フィラデルフィア、東京の各事例について、分野融合型解決策を導く計画手法の体系化に向け、これまでに収集した情報に基づき、計画プロセスを整理・比較した上で、高架構造物の撤去を通じた都市空間再生の成功と課題の要点を抽出した。要点は、具体的には、明確なダウンタウン・プランニングの戦略(ポートランド)、プランニングの欠如と持続可能性の問題(ボストン)、市民活動と災害(サンフランシスコ)、参加型プランニングと政治(シアトル)、強いリーダーシップと統合的アプローチ(ソウル)、大学デザイン・グループの取り組み(フィラデルフィア)、不明確な状況(東京)である。この内容は、2008年9月初旬に東京大学武田ホールにて開催された都市持続再生に関する国際会議で発表し、諸外国の研究者から好評を得た。 ニューヨーク・ハイライン、パリ・バスティーユ高架、ベルリン・リューター駅周辺、デュッセルドルフ・ライン河岸等の事例については、各事例の方式が、高架構造物の物理的状況、広域・地域交通政策、河川や水辺の状況、周辺市街地の性格・状況と再生戦略、経済活性化方策などの分野・要素との関連性から、どのような体制の下、どのような計画プロセスや検討作業を経て、最適解と判断されたのかを明らかにするために、インターネット、文献等による資料収集を行った。
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