今年度の主な研究実績としては、本研究の中核を占めるイタリア現地における調査の実施及び論文の発表が挙げられる。 まず調査については前年度の調査対象への追加調査と新たな対象への新規調査を9月と11月の二度に分けて実施した。 追加調査は、モデナのテアトロコムナーレがその対象であり、前年度に芸術監督へのヒアリングを行っているのに対して、今回は運営部門のディレクター、プロモーション・マーケティング部門の担当者へのヒアリングを実施し、当該劇場に関する多角的な分析に備えている。 新規調査はフェッラーラのテアトロコムナーレ、ラヴェンナのテアトロ・アリギエリ(その運営組織であるラヴェンナ・マニフェスタツィオーネ)を対象とした。両劇場はモデナのテアトロコムナーレと合わせてテアトロ・ディ・トラディツィオーネというカテゴリーに属しており、各劇場に関する把握はもとより劇場間の比較分析を視野に入れている。なお、フェッラーラのテアトロコムナーレにおいては馬蹄形のイタリア式劇場形式を活かしたあるプロダクションに関する劇場の使われ方調査も行っている。 論文発表は6月に文化経済学会〈日本〉において「イタリアの劇場におけるスタジョーネに関する研究-オペラを上演する劇場を中心に-」のタイトルで行った。語としては英語で"season"に対応する「スタジョーネstagione」はイタリアの劇場を理解する上で重要な概念であり、その概念に関する考察及びオペラに関してのその実態分析を試みた。
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