当該年度は本研究の最終年度であり、前年度までの調査分析結果の補足を主たる目的とする調査を行うとともに、既存の分析結果を論文としてまとめ、発表した。 調査はモデナ、フェッラーラ、ラヴェンナの劇場が中心であり、各劇場の多大な協力のもと、劇場の歴史、運営体制等多くのデータ収集がなされた。特にフェッラーラ・コムナーレ劇場においては、その把握が本研究の一つの背景であり目的でもあった「民営化」が調査の一月後に実現しており、その直前の状況を把握することが出来たことは重要である。今後の調査協力への了解が得られており、継続的な調査で、より有用な成果が得られよう。 論文は、日本建築学会計画系論文集第632号「現代イタリアにおけるオペラ劇場の枠組みと特性」及び文化経済学会文化経済学第6巻第2号「作品との関係性から見た劇場の様態把握モデルの構築」である。 前者は、本研究を通じて明らかになりつつある「音楽、演劇、ダンスといったジャンルに基づく劇場活動のカテゴリーの存在」に関して、特に音楽、その中でも同国を代表する舞台芸術であるオペラについて、その劇場の枠組みとその分布をみたものであり、劇場と地域の関係性把握を主旨とする本研究の主たる成果の一つである。 一方後者については、上述の「ジャンルに基づく劇場活動のカテゴリーの存在」に伴う、それらカテゴリーに応じた劇場の棲み分け及びネットワークが把握されつつあり、それを整理するための一つのツールとしてのモデル構築を試みたものであり、これも大きな成果の一つである。同モデルの適用を現在進めている。
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