本年度は今後の研究を進めるにあたり基本的な研究環境を形成するハードを整える事を主眼に置くとともに、主に建築・都市・社会学分野で人々の嗜好性や街の読み取り方に関連した文献を整え準備調査を行った。その調査の中で社会学や記号論、一連のカルチャラル・スタディーズの研究で街を遊歩する人々が持つ文化的フレームが都市空間における情報の能動的な読み取りを問題にしている事が注目に値する※1。これらの文化研究では若者文化やサブカルチャーを対象として一定のスタイルや型から文化を小さく断片化した社会的小集団や特定の「部族」(tribe)※2と日常生活との関係を見つめることからいずれも出発している。そのような社会的小集団が形成されるのに非常に重要な役割を担っていると思われる「メディア」を通じて、送り手がどのようなメッセージを生産-流通-消費のプロセスに組み込もうとしているのかという部分を解析する必要があるという知見が、一連の文献調査を通じて理論面からも補強する事が出来た。 もう一点は大阪に関わる文献調査の中で、大阪の街がどのような空間的範囲で認識され区分けされているかという空間単位の準備調査を行った。その中では大阪の空間を特徴づける二大地域とされてきたキタとミナミという単位のみで街が捉えられている分けではないことが浮かび上がっている。例えばキタと呼ばれる地域の中にもハービスENTを中心とする西梅田として把握されているエリアや、NU茶屋町や梅田ロフトという施設を中心とする茶屋町として把握されているエリアなど、建築施設を中心にした界隈という様々な小単位に区分け出来るという事が浮かび上がっている。今後はグローバルなカルチャーを念頭に置きつつ、メディア等の解析を通じて社会的小集団の整理を進めながら、一方でガイドブックやブランディングについての文献をあたりながら細かくその部分を解析することでその両者の関係を考察する必要がある。
|