本年度は昨年に実施した海外調査事例を整理し、そこから都市の形成と個人の嗜好性についての関連を整理するとともに、大阪大学コミュニケーションデザイン・センターが、大阪の中心地中之島で実施した中之島コミュニケーションカフェについて、参与観察を行った。 昨年度に調査を行った中ではラスベガスのように、資本主義経済が発展していく段階で形成された都市が未だに都市景観の骨格がマクロな構造に支配されているのに比べて、サンタクルーズなどで見られるように物語復興として個人同士の対話をベースに町づくりが進められた事例や、ミュンスター、カッセル、ヴェネチアなどでもアートを媒介にした町づくりが見られるが、個人的な表現や個人同士の対話が都市を形成している事例が今後大阪で展開される事は追って調査する必要があることが明らかになった。 本センターが実施した中之島コミュニケーションカフェでも、アートという極めて個人的な表現活動を媒介にして、不特定多数の個人同士が対話できる空間を都市の中に設ける試みを実施しており、2009年水と大阪の試みなども視野に入れつつそれが今後の都市景観の形成につながると期待されている。 ここでアメリカや、欧州で多く見られるように既に都市の成熟期に入っている地域ではそうした個人の表現行為や対話が有効化し得るかもしれないことが明らかになってきたが、一方でアジアを中心にしたまだ開発途上の都市では国家レベルで行われる都市開発が多く見られ、その結果が都市景観の形成についてどのような影響を及ぼすのかということは、グローバルとローカルのスタンダードを探る本研究においては重要な視点であるという事が本年度の研究整理で分かってきた。そのため、急遽アジアの都市開発の事例を現地調査し、その結果を研究成果に反映させることが必要である。
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