研究課題
1.日本の事例高野山東側周辺集落である樫原・子安は、急な斜面地に立地しており、人口減少・高齢化・過疎化の進行により、樫原は既に住民不在であるため集落跡景観となっており、子安は超限界集落の状態にあり、集落の一部で低・未利用地の進行が見られる。これまでに調査を行った東又・富貴と同じように、かつて存在した住居や田畑は減少傾向にあり、それらの跡地に槙などが植えられた樹林地や、管理不足となった荒地が増加傾向にあることがわかった。2.イギリスの事例チェシャー県ヴェール・ロイヤル区は、岩塩の掘削が行われてきた町で、農村や運河沿いの工業景観や産業遺産をはじめ、多様な景観を有する。当区は、イギリスで、低・未利用地を含む区域全体について、近年勧められている景観特性評価(Landscape Character Assessment)をとりまとめ、都市計画マスタープランの付加的ガイダンスとして位置づけを行うなど、イギリス北西部の中でも、進んだ取り組みが見られる。また、昨年行ったセント・ヘレンズの事例について検討を加えた。特に、フォレスト・パーク計画は、景観戦略と個々の事例との中間に位置し、複数の先進的な事例をまとめて、隣接する事例との関連性を考慮した整備が進められている。全体的な景観戦略との関連により、まとまりのある林地を形成してその特徴を生かすことを目的とし、新たな植林の促進が主な取り組み内容となっている。個々の事例への影響としては、他の公共緑地や周辺の林地とのつながりを増やすため、一旦整備が完了した公共緑地についても見直しが行われ、新たな植林が計画されている。また、マージー・フォレストとのパートナーシップにより、セントヘレンズ区の玄関口において林地景観を創出するなど、行政区域全体に関わる景観戦略の実現にも影響を与えうる大都市圏を視野に入れた取り組みが行われている。従って、こうした中間的な取り組みが低・未利用地における環境再生を推進するにあたり、個々の取り組みと全体的な景観戦略の双方に影響を与え、重要な役割を果たしていることが伺える。
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日本建築学会計画系論文集(日本建築学会) Vol.624
ページ: 357-362
http://www.wakayama-u.ac.jp/~miyagawa/research3.html